部品ライブラリ作成時の注意点

 

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多くの時間を費やし、難易度の高い電子回路の設計を行っても、

部品ライブラリ作成でミスしてしまったことで、これまでの努力が水の泡・・・

というケースを、もしかしてご経験されたことがあるかも知れません。

 

こうした悲劇(?)が繰り返されてしまう背景としては、

エンジニアの皆様がミスを起こしてしまうこと以外にも、

実は、メーカーから提供される情報の煩雑さにも

原因があると考えています。

 

そこでアート電子では、皆様に部品ライブラリの作成によるトラブルを

無くして頂けるよう、日々多くのプリント基板設計を行っている経験を活かし

ぜひ気を付けて頂きたいポイントや、よくある間違いを纏めてみました。

 きっと、一度は目にしたことがある内容と思いますが、ぜひご一読ください。

 

 

  1.PKGによってピン配置が異なる部品がある

 

   パッケージサイズが同等でも、部品の末尾が違うとピン配が違うことがあります。

   例えば抵抗内蔵トランジスタの場合、パッケージによりベースとエミッタが

   逆になっているものがあります。

  また、レギュレータでも、末尾が違えば、Vout、Vin、GNDのピン配が

  異なるものがあります。 

     対策としては、やはり部品は末尾までしっかり確認して記載することが大事です。

 

 

 2.部品型番の末尾が違えば、パッケージのみならず 仕様が変わることもある

 

    部品の型式を最後まで記載することは、部品ライブラリを作成する上での基本です。

   ですので、この辺まで記載していれば良いだろう、という発想は禁物なのですが、

  末尾が違うとパッケージが変わることに加えて、製品仕様が違ってしまうケースもあります。

   例えば、とあるメーカーのANDゲートの場合、型番の末尾によって、

  パッケージ×4種類のほか、数量×3種類、環境対応×2種類、リード仕様×4種類 が

  使い分けられています。

    また、あるメーカーのケースでは、更に厄介です。

  スペック・PKG・数量などすべての仕様が、

  10文字の品番だけで完全に表現される部品があるのですが、

  この品番に2文字を足した12文字にすると、メッキ仕様だけが変わる、

  というものがあります。

    これでは、正しい品番なのか、末尾2文字を省略してしまったのか、判別できません。

  もっと言うと、そのメーカー・部品のことを熟知していなければ、

  間違いがあっても気づくことができません。

    従って、型番はとにかく省略せず最後まで書くことが大事です。

 

 

 3.全く同じ型番でも、PKGや特性が違うことがある

 

    ここまでのよくある間違いは、型番を正しく最後まで書くことで

  回避できるケースでした。しかし昨今では、

  全く同じ型番の部品が、メーカー違いでリリースされていることがあります。

   同じ型番だから同じものだろう・・・と思ってしまいがちですが、調べてみると

  メーカーが違うと、パッケージが違ったり、特性が違ったりすることがあります。

   従って対策としては、部品表には、型番を記載することに加えて、

  メーカー名も入れておくことをお勧めいたします。

 

 

4.チップ部品には、0603(mm)サイズと0603(inch)サイズが混在する

 

    例えば0603サイズ、0402サイズと聞けば、まず頭に浮かぶのは

  ミリ単位(㎜)という方が多いと思いますが、チップ部品の仕様書には

  ミリ単位もインチ単位(inch)も双方が記載されているケースがあります。

   さらに、0603・0402・0201という呼び名は、ミリ単位にもインチ単位にも存在する為、

  これがますます混乱させてしまう原因になっています。

   例えばインチ単位でいう0603サイズは、ミリ単位でいう1608サイズ、

  ミリ単位でいう0603サイズは、インチ単位でいう0201サイズになります。

  お客様からいただく部品表に部品サイズを記載いただいていますが、

  まれにミリ(㎜)、インチ(inch)が混在していることがあります。

  これでは、部品表のサイズを信じて部品ライブラリを作成してしまうと、

  大きな事故を起こしかねません。

    これへの対策としては、もちろん我々の方では間違いがないよう、

  部品型番とサイズをチェックするようには致しますが、

  やはり、部品表作成時はサイズの単位を合わせることに加えて

  単位を表示・記載していただくことしか方法はありません。

 

 

5.推奨ランドパターンの 「様に見える」 図面に注意

 

    非常に厄介なのが、この事例です。

    とあるトランジスタメーカーの部品寸法図のところには、

  一見すると推奨ランドパターンのように見える図面が記載されています。

    しかしこれは、推奨ランドパターンではありません。

   下記の通り英語では明確に書かれているのですが、

 

  Pattern of terminal position areas.

   (部品の端子(足)の配置位置のエリアです)

  Not a recommemde pattern of soldering pads.

   (はんだ付けパッドの推奨パターンではありません)

    もちろん上記の日本語は仕様書には書かれていませんので、

  日本人である我々は、英語の意味を認識するよりも、

  図面認識の方が早いようで、多くの方が勘違いされます。

   お客様も、この図面を間違って認識されることが多く、

  「この通り部品ライブラリを作成してください」との連絡をよく頂きます。

    部品メーカー様も、理由があってこういう表現をされているに違いないのですが、

  ちなみに実装の推奨ランドパターンは、別ページに記載されています。

 

 

       いかがでしたでしょうか。ベテラン設計者の方々は「あるある」と感じられるかも

      知れませんが、急いでいるとき・切羽詰まったときは間違いやミスを起こしやすく

      なると思います。

      そんな時はぜひ、アート電子が部品ライブラリの注意点をいくつか言っていたな、

      という事を思い出してもらって、参考にして頂ければ幸いです。