基板のリワークは、リワーク事業を長年行っている専門の会社でも、どうしてもリスクというものが存在します。基板リワークを依頼する際には、このリスクを十分に理解した上で、どうリスクを低減させるか?という事を考えて依頼を行うことが、結果としてリワーク自体を成功させることに繋がります。
基板リワークにおけるリスクは、A.部品を外す時に発生するもの B.部品を取り付ける際に発生するもの の大きく2つに分類することができます。
A.部品を外す時に発生するもの
リワークで部品を外す際には、ハンダごてやリワーク装置などを用い、デバイスを加熱して取り外す、という事を行います。リワーク装置は温度プロファイルも設定されていますし、ハンダごてを使う際にも熟練の技術者が行うようにすれば、リスクは最小限に抑えることが可能です。しかし、これは「最小限に抑える」ということであって、100%回避できる、という訳ではないことを知っておく必要があります。
仮に、基板のパッド部がもともと不具合を抱えていたが、部品を実装する際には全く問題がなかったというケースがあったとします。この場合、基板をリワークした際に、取り外す際に少し力が掛かっただけでパッドが剥がれてしまう、ということが発生し得ます(これは、実は基板に不具合を抱えていなくても起こることもあります)。
また、リワーク装置やハンダごてによる加熱で、条件を最適化していたとしても、加熱した結果デバイスに異常が生じてしまう、といったことも少なからずあるのです。
B.部品を取り付ける際に発生するもの
対象基板に部品を実装し直す際には、アート電子のような基板リワークを行う企業は細心の注意を払って実装を行います。実装する際に考えておくべきリスクは大きく はんだ付け時の熱影響、確実にはんだ付けされているか、になります。はんだ付けを行った部分については目視での確認に加えて、目に見えない部分はX線検査装置で確認を行います。
C. 最終的には、基板の動作確認を行わないと分からない
そしても最も重要なのは、ここまで述べてきたようなリスクを回避できたとしても、100%リスクを回避できるとは言い切れない部分があります。というのは、最終的に問題なくリワークが完了したと判断ができるのは、X線検査装置によるはんだ付け状態の確認で100%問題ないと判断ができても、実際に基板が問題なく動作することを確かめることでしか、最終判断ができないからです。特にデバイスが熱影響を受けた場合、これを基板動作確認以外の方法で見つけることができないのです。なお、多くのリワークを行う企業では基板の動作確認はできないことも、リワークを行う会社が動作保証することができない理由のひとつです。
このように、どうしても基板リワークにはリスクがつきまといます。従って、リワークを依頼する開発者・設計者の方々は、「この会社に依頼したら、どこまでリスクを最小化できるか?」といった視点が必要です。
リスクを最小化する方法としては、リワークを行う際の相互の情報交換を密にする、何を優先させるか(デバイスか基板か等)などがありますが、最終的には、基板リワークにおけるノウハウと実績が、リスクを最小化させる大きなファクターであると言えるでしょう。