フレキシブル基板を依頼する際に押さえておきたいポイント

フレキシブル基板はリジット基板と比較して、

機構設計の自由度が高い一方、

依頼時に検討すべき事項が多く、

基板メーカーによって対応できる内容も大きく異なります。

 

基板仕様を伝えたとしても、

製造プロセスを考慮してメーカー側で編集・変更を行うこともあります。

 

そのため、開発・設計者は基板の仕様書や図面・回路パターンを送付するだけでなく、

どこが重要なポイントかを明示し、フレキシブル基板の仕様を

事前にすり合わせることが大切です。

 

そこで今回は、

フレキシブル基板を依頼する際に押さえておきたいポイント

を具体的に解説いたします。

 

 

リジット基板とフレキシブル基板の違い

リジット基板はガラスエポキシなどを用いた硬質の基板で、

機械的な剛性・加工性に優れており、量産性も高い点が特徴です。

 

一方、フレキシブル基板はポリイミドなどの柔軟な材質を使用しており、

曲げに対応できる構造であるため、狭いスペースに配線を集約したい場合や、

基板同士をケーブルレスで接続したい場合に採用されます。

 

下記表がリジット基板とフレキシブル基板の特性・仕様をまとめた比較およびそれぞれの項目で設計・開発者が持つべき視点を記載しています。

表1. リジット基板とフレキシブル基板の比較 

項目

リジッド基板

フレキシブル基板

設計・開発者が持つべき視点

構造・材質

ガラスエポキシ(FR-4)が主流

硬質で平面構造

ポリイミド(PI)、PETなどの絶縁フィルムをベースとし、銅箔を積層

材料特性に応じた屈曲・固定方法を考慮する。

層数

1層~多層(10層以上)

1層~2層が多い

(弊社では最大8層)

必要な信号数・電源ラインに応じて層数を選択する

銅箔厚

18〜70μ 程度

(100μ以上の厚銅もある)

12・18・35・70μ

電流容量に応じた銅箔厚を選定し

フレキシブル基板の場合は、曲げ性能とのバランスを考慮する

機械的特性

剛性・寸法安定性が高く、振動にも強い

曲げに対応できる反面、剛性は低く補強板が必要になる場合もある

構造・形状に応じて必要な強度・屈曲性を検討する

電気的特性

誘電率が安定しており高周波設計にも適する

材料によっては誘電率がばらつきやすく、インピーダンス整合に注意が必要

高速信号・インピーダンス整合の要件を踏まえて基板を選択する

熱特性・放熱性

銅プレーンやビアを介した放熱設計が容易

フィルム材は熱容量が小さく熱集中しやすいため、放熱構造を検討する必要がある

発熱部品の配置や放熱経路の確保できるかを検討する

信頼性

広範な温度・湿度環境に対応が可能で、振動や衝撃による半田クラックリスクが比較的低い。

屈曲時や温度サイクルでの割れ・クラックなどに注意が必要

使用環境(振動・熱・曲げ回数)を考慮した耐久性設計が必要

設計自由度

平面的な設計が基本となるが、多層化による立体配線は可能。

立体配線・可動部を含めた自由なレイアウトが可能

どのくらい筐体形状や限られたスペースに合わせられるか

修理

メンテナンス性

不具合部位のリワークが比較的容易

曲げ部の再加工が難しく、リワークは限定的で、基板全体の交換が必要な場合もある

搭載装置のライフサイクルに応じて基板のリワーク(修理)や交換のしやすさをどこまで重視するかを検討する

GNDによるノイズ対策

GND設計が容易でシールド性に優れる

銅が薄いためシールド層を設けにくく、GNDプレーンやシールド層の設計に工夫が必要

シールドやグラウンド設計を設計初期段階で検討する

 

 

フレキシブル基板を依頼する際に押さえていただきたいポイント

フレキシブル基板は設計自由度が高い基板ですが、上述した開発・設計者が持つべき視点を含め、依頼時には仕様を含め特に押さえるべき項目があります。

①層構成・板厚(曲げ部の構造)を明確化する

フレキシブル基板は、層構成によって

曲げられる回数・曲げ半径・耐久年数が大きく変わります。

・屈曲は1回だけか(組立時のみ)もしくは繰り返し曲げるか

・曲げ部のみ薄くしたいか、全面を薄くしたいか

を明確にしていただくと、

どんな材料を選定するべきかが明確になります。

 

②回路パターンと部品配置のバランスを考慮して保護層を決定する

フレキシブル基板へ部品を実装する場合にいくつか注意すべき項目があり、

その中でも回路パターンと部品配置のバランスを

十分に考慮する必要があります。

 

特に、パッド間隔が狭いとショートにつながる可能性があるため、

コネクタ端子のように密集したランド部では、

例えば「カバーレイ」と「レジスト」のどちらを採用するかを

あらかじめ検討しておくことが重要です。

 

カバーレイはフィルム状で強度が高く屈曲に強い一方で、

パッドが露出しない構造のため加工自由度が低くなります。

レジストは加工性に優れますが、耐摩耗性が低く、

端子部では剥がれやすいという特性があります。

 

両者の特性を理解した上で、

使用用途に応じた使い分けが求められます。

 

③インピーダンス整合に対応した設計を行う

フレキシブル基板は、インピーダンス整合が難しいという点があります。

シミュレーターで整合をとりプリント基板製造を行いますが、

実際に仕上がった製品では±10%以上の変動が発生するケースもあります。

 

そのため、具体的には

・インピーダンス特性が重要なラインは長さを極力短くする

・配線幅+空間を広めに設計する

・可能であれば解析(TDR)を用いて事前検証する

といった対策が必要です。

 

但し、メーカーによってはインピーダンス保証自体を行っていない場合もあるため、「整合が必要かどうか」を依頼時に伝えることが大切です。

 

 

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