高周波基板の設計においては、
「信号品質の確保」と「ノイズ対策」が特に重要になります。
汎用基板と比較して、
周波数が高くなればなるほど、設計段階のわずかなミスから、
予期せぬノイズ発生や大幅な設計の手戻りを引き起こす原因となります。
「基板からの放射ノイズが、周辺機器に悪影響を与えてしまう」
「シミュレーションでは問題なかったのに、実機で誤動作する」
といったトラブルを防ぐためにも、高周波基板の設計において、
特に気をつけるべきポイントがいくつかあります。
そこで今回は、
「高周波基板の設計において押さえるべき5つのポイント」
と題しまして、高周波基板の設計において
特に押さえていただきたいポイントを5つ解説いたします。
ポイント①:適切な基材選定によって、高周波信号の減衰を最小限に抑える
高周波基板の設計において、特に重要なのが「基材選定」です。
一般的なFR-4基材は安価で加工性に優れていますが、
GHz帯を超える高周波領域では「誘電損失」による
信号減衰が無視できなくなります。
高周波信号をロスなく伝えるためには、誘電正接が小さい基材、
いわゆる「低損失材(RF基板)」を選定することが不可欠です。
また、基材の「比誘電率」も重要です。
信号の伝搬遅延は比誘電率の平方根に比例するため、
高速伝送を求める場合は低誘電率の材料が有利となります。
さらに、高周波回路では温度変化や吸湿による誘電率の変動が
インピーダンスのズレを引き起こし、通信品質を悪化させる要因となるため、
環境変化に対して電気特性が安定している基材を選ぶことも、
設計品質を高める上で極めて重要な要素となります。
ポイント②:リターンパス確保で、ノイズの発生を防ぐ
高周波基板の設計時に見落とされがちなのが、リターンパスの確保です。
信号は必ずGNDを通って電源に戻りますが、
高周波電流は「抵抗が最小の経路」ではなく「インダクタンスが最小の経路」、
つまり信号配線の直下のGND層を流れる性質があります。
もし下記図1、図2のように
信号配線の下にあるGNDプレーンにスリットが入っていたり、
他の配線によってGNDが分断されていたりすると、
リターン電流はスリットをまたいで迂回します。
図1. スリットまたぎ配線
図2. GNDプレーンの分離例
この迂回経路は大きなループアンテナとして機能してしまい、
EMIの発生源となってしまいます。
したがって、高周波信号を通す層の直下には必ずベタGNDを配置し、
決して分離させないこと、そして可能な限り同一層で配線をし、
リターンパスを最短・最適に保つ設計が不可欠です。
ポイント③:最適な配線パターンで信号のズレを防ぐ
配線の形状や引き回し方も、
高周波基板の性能を大きく左右します。
例えば、限られたスペースで配線長を確保するために
ミアンダ配線を行うことがありますが、図3のBeforeのように
折り返し部分の間隔が狭すぎると隣接する線同士で干渉し、
インピーダンスが変動する原因となります。
したがってミアンダ配線の場合、間隔を広げるように設計します。
図3. ミアンダ配線例
また、差動ペア信号においては、2本の配線長を完全に一致させる等長配線が必要です。
配線長にズレが生じると、信号の到達タイミングが変わり、
コモンモードノイズが発生して通信エラーを引き起こします。
さらに、配線の屈曲部を90度の直角に曲げると、
その角部分で線幅が実質的に太くなりインピーダンスが変化してしまうため、
特に高周波基板では、直角配線ではなく、
下記のように45度にしたり、もしくは円弧状に配線をして、
信号の反射を最小限に抑える工夫が必要です。
図.4 45°配線の例
ポイント④:インピーダンス整合でリンギングや信号反射を防ぐ
高周波信号を正しく伝送するためには、
「特性インピーダンス」を一定に保つことが求められます。
もし配線パターンのインピーダンスが途中で変化すると、
その不連続点や終端部で信号の「反射」が発生し、
リンギングなどのノイズが生じてしまいます。
これを防ぐためには、「インピーダンスマッチング」を行うことが重要です。
例えば下記のように、終端抵抗を受信端の後に配線するなど、
必要に応じて適切な終端抵抗を配置して
反射波を吸収させる設計が必要です。
図5. 終端抵抗の配置
特に、プラスとマイナスの信号でデータを送る「差動ペア信号」においては、
2本の配線間の結合度合いもインピーダンスに影響を与えるため、
線幅や間隔を適切に調整しなければなりません。
またパターン設計時にはシミュレーションを活用し、
製造バラツキまで考慮したマージンのある設計を行うことが、
波形品質を保証する鍵となります。
ポイント⑤:ビアの構造を最適化し、共振による信号劣化を防ぐ
高周波信号にとってビアの構造も重要で、
特にビアスタブに注意が必要です。
例えば、下記の図6のbeforeように、貫通ビアを使用しており、
3層目を経由して6層へ配線がされている場合、
信号の通らないビアの部分は不要なスタブとなります。
高周波領域では、このスタブが一種のアンテナやコンデンサとして振る舞い、
特定の周波数で共振を起こして信号を大きく減衰させる原因となります。
これを回避するためには、図6のafterのように
ビルドアップ基板などで、スタブの発生しないビアの構造にしたり、
バックドリルでスタブを除去するといった対策が必要です。
図6. ビアスタブ
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