イミュニティ対策における基板設計のポイント

EMS試験で想定外の誤動作が発生した場合の主な原因として、

「配線間の位相ずれ」や「特性インピーダンスの不一致」

などがよく挙げられます。

 

こうしたイミュニティ対策における問題は、

設計段階のちょっとしたミスから生じ、

後から対策を講じるのが難しい領域です。

 

イミュニティ対策は次の2つの考え方に整理できます。

 ・イミュニティ対策のために、どう設計を行うか

 ・外部ノイズによる影響を受けた場合、どのように影響を抑えるか

 

どちらも重要ですが、再設計などの手戻りを防ぐためには、

初期段階で「ノイズを受けにくい設計」を行うことが最も重要です。

 

そこで今回は、「イミュニティ対策における基板設計のポイント」と題しまして、

ノイズに強いプリント基板を実現するための、

具体的な設計ポイントについて解説いたします。

 

ちなみにイミュニティとは?

ノイズ対策は、「エミッション対策」と「イミュニティ対策」の

2つに分けることができます。

 

エミッション対策とは、機器から外部へ放出される不要なノイズを低減し、

機器がノイズの発生源とならないようにするための対策です。

 

一方、イミュニティ対策は、外部からノイズを受けても、機器が誤動作したり、

破壊されたりしないようにするための耐性を高める対策です。

 

つまり、エミッション対策はノイズを出す側の対策、

イミュニティ対策はノイズを受け取る側の対策になります。

 

このイミュニティ対策は、外部からの予測しにくいノイズ(静電気、サージ、電磁波など)

への対策であり、自機から出るノイズを抑えるエミッション対策と比較して、

対策の難易度が高いとされています。

 

設計段階のわずかなミスが、イミュニティ対策に影響を及ぼしやすく、

後からの修正が難しいため、設計段階での対策が不可欠です。

>>イミュニティ対策とは?

 

イミュニティを抑える基板設計のポイント

イミュニティ対策を考える上では、

部品単体のノイズ対策と基板設計全体のノイズ対策の

両方を意識することが前提ですが、

基板設計においてパターン配線で重要になるのが

信号ライン、電源ライン、グランドの取り方などが挙げられます。

その中で高速の伝送に使用される配線で特に重要になるのが「差動信号」です。

 

差動信号は、2本の信号線で逆位相の信号を伝送し、

その差電圧を受信側で読み取る方式です。

つまり、2本の線に同じノイズが乗っても、

受信時にノイズが打ち消しあう仕組みになっています。

 

そのため、差動信号は

・ノイズが乗っても互いに打ち消すため、外部ノイズの影響を受けにくい

・高速信号でも安定した通信品質を保てる

・信号振幅を小さくできるため、消費電力を低減できる

といったメリットがあります。

 

こうした理由から、

高速・高周波が求められる基板では差動信号が採用されます。

差動信号 インピーダンス

>>差動ペア配線についてはこちら

 

差動信号は上述のようにメリットが多い一方で、

配線時には下記の設計ポイントを押さえる必要があります。

 

ポイント①:等長配線を行い、位相ズレを防ぐ

2本の信号線の長さが異なると、信号の到達タイミングがずれ、

位相差が生じてノイズ除去効果が低下します。
そのため、等長配線を行うことが基本です。

 

但し、等長配線を行う場合、下記のようにできるだけ

パターン間隔を保った上、送信側で配線長を合わせておくことです。

これはパターン間隔が変化すると、特性インピーダンスが乱れ、

ノイズや反射を引き起こすためです。

等長配線を行い、位相ズレを防ぐ

図1.等長配線の例

 

したがって、設計段階で配線間隔を一定に保ち、

インピーダンスコントロールを行うことが重要です。

 

ポイント②:インピーダンスを合わせ、反射ノイズを防ぐ

受信前の信号整合性を確保するため、

受信側で差動ペアの特性インピーダンスを揃えることが重要です。
不一致がある場合、反射ノイズや信号劣化の原因になります。

したがって、受信ICの直前など、配線の終端に、

その配線の特性インピーダンスと同じ抵抗を接続します。

ノイズを抑える終端抵抗の配置ポイント

>>ノイズを抑える終端抵抗の配置ポイント

 

ポイント③:高周波信号ではビアや急カーブを極力避ける

配線カーブが多いと、

内外周で配線長に差が出て位相ズレが発生します。

特に高周波の場合は、このわずかな位相差が、

信号周期に対して無視できない割合となり、

受信側での信号識別が困難になります。

 

また、高速信号の場合、ビアが特性インピーダンスの不連続点となり、

信号品質を劣化させる要因となるため、できるだけ同じ層で配線をします。

隣接層がリファレンス層でスリットなどがあるとインピーダンスが不連続となります。

 

もちろん、ビアが必要な場合もありますので、その際はスタブ除去など、

ビアの構造自体を高速信号向けに最適化する設計が求められます。

 

上述のビアや急カーブは、

一本の信号線でも反射ノイズが発生するなどの影響がでますが、

差動信号の場合は、電圧差で信号を認識するため、

特にその影響が出やすいため注意が必要です。

 

ポイント④:直角配線をせず、スムーズな伝達経路を確保する

直角配線の場合、特性インピーダンスが局所的に変化し、

反射ノイズが発生します。

 

差動信号の場合、反射ノイズの発生の他、

位相ズレが生じ、イミュニティ対策への影響が顕著に現れます。

 

したがって、直角配線はせず、配線は下記のように45°もしくは

曲線で設計し、スムーズな伝達経路を確保することが必要です。

 直角配線をせず、スムーズな伝達経路を確保する

図2.45°配線の例

 

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