電子回路では、ノイズ発生や、ノイズによる動作が不安定になる、
などの問題がよく発生しますが、一方で、発熱も大きな問題です。
ノイズと発熱の対策は表裏一体という側面もありますので、
今回のコラムでは、
電子回路で発熱が問題になった時、あるいは事前に発熱対策を講じておきたい場合に、
プリント基板の開発・設計者として、どのようなポイントを押さえておくべきかを
大きく、A.回路設計、Bパターン設計、C.基材、D.部品による放熱、の順に
お伝えして参りたいと思います。
A.回路設計における注意点
1.部品選定
部品選定においては、発熱する部品をあらかじめ押さえておくことに加え、
車載ECUなどが特徴的ですが、非常に高い温度環境下での動作が必要な場合、
その使用する環境に応じた部品選定を行っておくことが必要です。
その場合には、該当部品のデータシートから「動作温度」欄を
確認することができます(例 -55°C~125°C など)。
B.パターン設計における放熱対策
1.部品配置検討
部品の配置検討において注意すべき点は、下記になります。
①実装する部品の発熱を考慮した、部品配置を検討
発熱が集中しないようにレイアウトを考慮することは重要ですが、
たとえば部品には、(A)発熱が大きく、自身も熱に強い部品と、
(B)発熱は大きいが自身は熱に弱い部品があり、
これらを隣接させないといった対応も必要です。
こちらの詳しい解説は、下記のリンクを参照してください。
コラム:「基板レイアウトと熱」
②部品面、はんだ面で発熱する部品を同じ位置に置かない
③放熱ビア(サーマルビア)を打つ
放熱ビアは、発熱の多い部品の近くや端子に設けるもので、
例えば両面基板の場合は部品実装面から裏面へ熱を効率的に
逃がす目的で用いられます。
なお、発熱部品とビアが遠い、あるいは少ない場合は
効果が減少しますので注意が必要です。
適切な放熱ビアの設定など、詳しい解説については下記を参照ください。
コラム:「電子回路の放熱対策(プリント基板編3)」
2.熱シミュレーションを活用する
パターン設計時に、熱解析ソフトを用いた熱シミュレーションを行えば、
発熱箇所をデータの段階で把握でき、事前検討・対策を行うことが可能です。
当社では、パターン設計図から
熱流体解析ツールを使用しての熱シミュレーションが可能です。
電子機器の小型化が進み、高密度設計が要求されます。
その時にに課題となるのが熱の問題です。
熱流体解析を行うことによってプリント配線板の熱の伝わりを
可視化することができます。
熱シミュレーションのタイミングとしては、
部品配置の段階でも対応は可能ですが、
パターン配線で温度特性が変化するため、
パターン配線後に行うことをお勧めいたします。
標準対応フォーマットは、IDF,IDX,Garberとなります。
3.大電流を取り扱う場合は、銅箔厚や幅を考慮する
我々のようなパターン設計を行う会社に委ねられる場合も多いですが、
プリント基板に関わる皆様にはぜひ知っておいて頂きたいポイントです。
大電流基板に関する設計情報は下記リンクに記載しておりますので、
こちらもぜひご確認ください。
コラム:「大電流基板を開発・設計する際に押さえておきたいポイント」
C.プリント基板の材質変更による放熱対策
1.高耐熱・高放熱基材を採用する
面実装部品は基板を介しての放熱が前提で、通常のガラエポ基板でも
効果はありますが、下記にて紹介する高耐熱基材を採用した方が、
より放熱性が高いため発熱対策としては有効です。
・高放熱性基材(アルミ基板やメタルコア基板)
・厚銅基板
・メタルベース基板
・銅インレイ基板
ただし、これらの高耐熱基材を用いたプリント基板は
コストが高くなるので注意が必要となります。
D.部品による放熱対策
パワーMOSFETなどの発熱部品は、基板を通じての放熱だけでは
不十分な場合が多いため、追加の対策として下記アイテムを採用し、
熱を筐体へ逃がすなどの対策を行うことがあります。
・ヒートシンク
・熱伝導シート
・放熱FAN
各項目の詳しい解説は、下記のリンクを参照ください。
コラム:「電子回路の放熱対策(ヒートシンク編1)(No.11)」
「電子回路の放熱対策(放熱グリス、シート編)(No.13)」
なお、プリント基板上の話ではなくなりますが、上記のほか、
水冷システムやFAN・空気孔などを筐体に設けるといった構造で
放熱を行う場合もあります。
以上、電子回路基板の開発・設計を行う際の
熱対策の基本についてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
アート電子では上記のほかにも、プリント基板における熱対策について
技術情報を発信していますので、ご興味のある方は下記も参考になさってください。
コラム:「プリント基板における熱対策」
どうぞ宜しくお願い致します。